出発から2日目 富士の呪縛

朝6時。
コージの家の犬がドアを掻き毟る音と、台所から聞こえてくるトントントン・・お母さんの朝食の準備の音で目覚める。日本の朝だなあ・・・と心地よい目覚め。
みんなまだまだすやすや眠っているが誰一人としてイビキもかかずに行儀よい。
カーテンを広げ、朝日を浴びせ、皆を起こす。

さすが魚港の街 沼津市だけあって、朝食はお母様特製アジの開き定食フルセット。昨日差し入れにもらった竹の子の煮物と共に、みんなで美味い美味いといってあっというまに平らげた。ご馳走様でした。

正面のTVからは今日も一日快晴との予報が流れている。いいぞ~
でも明日は午後から雨らしい。

さっそく荷造りをし、ご両親にお礼の挨拶と記念撮影を頼み、出発する。
ご両親はわれわれのことをどう思っているのかなあ。「息子よ、頼むから、あんな頭の弱そうなお先輩のマネだけはしないでね・・(母親の心の叫び)」

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コージに千本浜公園まで送ってもらう。この浜は本当に美しい、すばらしい。何度か車で来たことがあるが、お気に入りの場所だ。しばらく景色を満喫した後、8:40 コージに見送られ出発。

左に青い駿河湾、左に松林と聳え立つ富士山を見ながら堤防脇の自転車・歩行者道を悠々と漕いだ。レーサーの練習場所にもなっているようだ。

われわれも漕いで漕いで漕ぎまくった。

どこまで行っても何時間走っても富士山が付いて来る。コータはこれを「富士の呪縛」と詠んだ。

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「田子の浦ゆ 打ち出でてみれば ま白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける 」by 山辺赤人
まさにそんな感じだったであろう田子の浦、でも港は大きな船とか工場とか、工業化の勢いはすごい。田子の裏事情であった。

あっさり通過 国道1号線に乗る。

海沿いにもどったら太平洋をバックに鶴の拳↓ まだまだ元気。
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信号待ちで超本格的自転車おじさんに声をかけられた。もう白髪の具合からして50歳以上だろうか(違ってたら失礼)、半透けのサングラスから見える目が綺麗。「岡山かあ、遠いですねぇ」。えっ、おっちゃんはどこまで?「私は京都までですよ、じゃ、良い旅を!」そういうと颯爽と走り去っていった。

由比で桜海老のかき揚げ付き、そばを食す。んまぃ!!。

清水駅前を通過 12:30
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今日は距離を稼ぎたいから三保の松原はパスだな。

なんて、言いながら走りやすそうな道を選んで走っていると、コータが「あれ?oyakata、ありえない方向に富士山がいますけど??」

「あはは、そりゃそういう時もあるだろう。長い道のりだし・・・気にするな」

廃線跡を自転車道にしたらしく、途中、駅のホームの跡などもあり、なんとも情緒的な道だった。駅の跡地で休憩。とってもいい自転車コースじゃないか!本当お勧めです。
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比較的走りやすい自転車道路が終わり、地図看板が現れる。ちょっと見て見よう。

あれ・・・すでに三保の松原半島(仮称)に入っているどころか、もうすぐ突先じゃないか!??、コータ「だから言ったじゃないですか、富士山がありえない方向にあるって」・・・・。

おいみんな!ここまできたら突先を見てやろうじゃないか!!。
と、開き直って更なる深みへと走り出す。

清水エスパルスの練習グランドとかあったりした。そして富士山はいつも正面にいた。

真崎海水浴場というこの半島の先端はそれはそれはキレイな景色だった。
「この景色を見るためだったら間違えた価値はあっただろ、もし事前に知ってたら絶対に遠回りしてても来てたな、俺」などと思いつく言い訳を並べつつ、記念写真を撮って先を急いだ。

ひたすら海沿いの道を漕ぐ。はっきり言って変わり映えのしない景色に飽きる。、「太平洋岸自転車道」などと大げさな名前がついているのに、ところどころに金属ポールが立ちはだかり、降りないと進めないくらい狭いところが何箇所もある。ここだけ走れば「うわーーーっつ素敵~、最高~!!」と十分感動する道なのだろうが、さすがに100km近く海岸を走ってきたのでもう海の景色は飽きた・・・」なんて言ってたらバチがあたりますな。

静岡は本当にでかい。走っても走っても静岡。走っても走っても富士山が後ろにいる。まさに富士の呪縛だ。
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工事中が多い国道150号線、通称いちごラインではお決まりのイチゴを食べた。
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12年前の自転車旅行でこの道を通った時の話、ある自転車青年と出会った。そこそこの荷物を自転車に積んだ彼を後ろから追い越すタイミングで私は声をかけた。
「どこまで行くんですか?」

すると彼は暗い顔でこう答えた。
「どこに行くかだって?、さあ分からないね・・・。俺なんかどこにいってもつまはじき者でさぁ、戻るところもなければ、行くところもないんだよね・・・」
・・・あぶねえなあ、こいつ。かなり寅さん気取りのロンリーチャップリンだぜ。
「へーそなんですかぁ、大変ですね。でも頑張ってくださいね、じゃあお先に!」

もしコレを読んだご本人様、生きておいででしたらコメントください。お待ちしてます。

そんなことを思い出しつつ、西へと進む。

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風力発電の大きな扇風機を眺めながら150号を走っていると、用宗という街の小阪という交差点からいきなり自動車専用道になる。自転車は迂回するのだが、まったく持って説明がない。しかたなく、第一村人のおばあちゃんを発見し、コースを聞くと、「あっち行って、突き当たったらこっち行って、まっすぐ行きなさいと。つまりは海沿いに行って、この道は登ったら最後行き止まりだからね、大丈夫??狭いトンネルがあるからきいつけなさいよ、心配だなあ・・・」と。随分子ども扱いされたが、聞かなかったら判断を見誤るところだった。助かったよおばあちゃん。
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県道416号線用宗街道をひた走る。結構な上り坂だ。途中トンネルが崩落し、海の上に新しい道路を作ったところとか通った。大崩海岸という。側道も狭く、ちょっと怖かった。さらに上り坂の狭いトンネルとかも通った。おばあちゃんが言っていたとおりだ。
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そうこうしながら走行していると、焼津の町に出た。看板どおりに1号線を探し、看板の示すとおりに走っていくと自動車専用道にぶち当たることが多くなった。変な向きに走らされる場合は看板よりも方角を頼りに自分を信じて進むことをお勧めする。もしくは詳しそうなコンビニの店員なんかに聞きまくると良い。

これまたそうこうしている間に日が沈む時間になってしまった。本日中に新幹線で東京の国立に戻り明日通常出勤しなければならないコータを電車に乗せるため、あのSLで有名な(←後で知った)大井川本線金谷駅に到着。コータは自転車を分解。通りすがりの大学生くらいの青年に記念写真を頼む。出発地点を聞かれたので答えたら、マジで驚いていた。目的地点を教えてあげたら気絶しそうになっていた。コータの輪行完了も確認しないまま、ここまでの彼の健闘を称え、先を目指すべく我々はその場を出発した。19:00

これからはケージ君と2人旅行だ。ケージは自発的なコミュニケーションが苦手なのか、会話がほとんどない・・・今回の旅で誰とも口を聞いているシーンを見ていない。彼とやっていけるのかこの先が心配だ。

辺りはすっかり暗闇の中、森の中の県道381号線を登る。国道1号線と合流し一安心。
気が付けば、今回持ってきたダイソーの地図は役にたってねえなあ。自転車用の道路地図じゃないもんなあ。

ケージを前に走らせ、もくもく、もくもくと無言で夜の道を進む。後ろを走らせたら気づかないうちにはぐれそうなのだ。何時間も何時間も景色の無い暗い道を進む。

夜中の23時ころ浜松を10kmほど過ぎたあたりで、こんな時間でも開いていた中華料理屋で遅い夕食を頂く。店長と少し歓談する。眠いのをこらえつつ、再出発し約1時間後浜名湖を通過。天竜川とかいつの間に越えたんだろう。。。

すでに昨日から辛かったのだが「お尻の痛み」と「尿道圧迫」。結構痛い。自転車に普段そんなに乗っていないのがバレる。痔主(ぢぬし)ではないが、しょっちゅうポジション換えしながら走っている様は情けない。

自転車もなんだかグラグラしてきたと思ったらいろんなネジが緩みはじめていた。締めなおしたら直った。ネジが外れてなくなってたら旅の終わりだった。気づいてよかった。
MR-4は折りたたみ自転車でヒンジが多い分、そういう現象が起こりやすいようだ。気をつけよう。

今日はとりあえず、浜名湖の西の湖西市にある「潮見坂・道の駅」で野宿とするかな・・・
ということで本線をはずれバイパス沿いの道の駅へ。気が付けばもう日付が変わるのね。
ここまでは見事なまでに予定通りだった。たいした予定はなかったが・・・(計画中2日目はこの道の駅までたどり着きたいと思っていたので)

すでに自転車旅行の先客がいて、テント張って寝てる。
が、しかし、われわれも野宿のつもりが、ある情報をきっかけに予定変更。続きは明日。

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本日の走行距離185km えっ、まだ静岡出てないの??? O・・・TZ
by oyakata58 | 2007-05-01 07:24 | 東京→岡山 チャリ旅 | Comments(0)

何気ない日常の中に見つけた小さな幸せを綴ります


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